うつくしいものの話をしよう。
いつからだろう。ふと気がつくと、
うつくしいということばを、ためらわず
口にすることを、誰もしなくなった。
そうしてわたしたちの会話は貧しくなった。
うつくしいものをうつくしいと言おう。

長田弘「世界はうつくしいと」より抜粋

突然ですが、うちの甥っ子が可愛い。こんな可愛い生き物が、この世にいるのかってくらい可愛い。

もうすぐ2歳になる彼。言葉を覚えて、意思疎通が徐々にできるようになってきた。

我が家に遊びに来て、私の夫と遊んでいる時、お腹から絞り出すような大声で叫んだ。

「っおもしろいっっっっっ!!!」

びっくりしたのと同時に、すごく感動した。彼は、今していることを「面白い!」と全力で叫んだ。

「美味しい」とか「嬉しい」とか、自分が享受したことに対する反応としての感情や、誰かがしたことに対する「面白い」は言う機会がある。けれど、“今” “自分が”している出来事に本気で「面白い」と言ったことは、もしかしたら物心ついてからは、ないかもしれない。

彼は、彼の父親とトラクターに乗っている時も、ラジオから流れてくる瑛人の「香水」を聴いて、

「ふふふ、おもしろいねー」

と言って、歌を真似して覚えたらしい。私に会った時に歌ってくれた。

「ろーるちぇ ろーるちぇ がっぱーなのねっ」

という、ドルチェ多めのオリジナル曲。うっかり涙ぐむくらい可愛い。

その時の感情を的確に表す言葉が、大人になったらたくさん増えるのかもしれない。でも、面白いときに素直に面白いと言えるだろうか。そもそも身の回りに起こる出来事を、面白いと思える感受性があるのだろうか。

冒頭の、長田弘さんの詩には続きがある。

風の匂いはうつくしいと。渓谷の
石を伝わってゆく流れはうつくしいと。
午後の草に落ちている雲の影はうつくしいと。

まだ続くのですが、素敵な詩なので気になる方は是非調べて読んでいただきたい。

勤めを辞めて、自宅で過ごすことが多くなったら、今まで感じられなかった季節の移ろいを肌で感じられるようになった。

春の夕暮れどきの空気の色は濃くて透明な青色だということ。

若い、白樺とヤエガワカンバは今まで区別がつかなかったけど、芽吹く時期が少し違うことに気付いて区別ができたこと。

毎回夕焼けの色が違うこと。

朝霧が晴れていく瞬間、急に暖かくなること。

明け方は野鳥の声が賑やかなこと。

甥っ子のように素直に言葉にはできないけれど、ひとつひとつ、静かに感動した。

美しいものへの感受性、高めていきたい。それは、一見なんの関係もないように見えるが、施術にも関係すると思っている。美しいものを見た後の施術は、美しいものが反映して手から伝わると思っている。

「マックジョブじゃなく、アートになりなさい」

ある方に言われた言葉。衝撃的で、ずっと頭の中にある。マニュアルがある仕事と、その人にしかできないオリジナルの仕事。

ずっと、自分なりの“アート”を模索しながら仕事をしたい。そして、それを喜んでくださる方がいたら、最高なんじゃないか。自分にできること。自分にしかできないこと。高めていけるもの。どんどん探していこうと思う。

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