「千曲川沿い全域で、花火を上げるっていう計画があるだいな(あるんだよ)。ほら、おっとし(一昨年)台風19号があっつらい(あったでしょ)?その関係で。来週やるから。おい(お前)はアナウンス手伝いできるかい?」

父から、急に言われた。いつものごとく、早口の方言混じりで。急な無茶振りもいつものことだ。私はもう、驚かない。

父は、お祭りわっしょい男だ。イベントごととなると、めちゃくちゃ張り切る。父の友人もしかり。

コロナで2年できていないが、毎年、実家が牛乳を出荷しているヤツレンの牛乳工場で、感謝祭があった。そこで父はじゃがバターを、父の友人は焼きとうもろこしを、毎年出していて、名物おじさん×2になっていた。

うちの畑でじゃがいもをたくさん育てて、みんなで芋掘りをして、火を焚いて大きな鍋で蒸すじゃがいもは、ほくほくで本当に美味しい。

「美味しいらい?」(美味しいでしょ)

丸顔のドヤ顔でお客さんと接する父は、生き生きとしていた。

とうもろこしおじさんに至っては、とうもろこしのかぶりものをして、名実ともにとうもろこしおじさんとなり、とうもろこしを売っていた。そんなおじさんのとうもろこし、お世辞抜きにめちゃくちゃ美味しい。誰にあげても

「こんなに美味しいとうもろこし初めて!」

と絶賛される。農場にとうもろこしを買いに行くと、焼いたとうもろこしを食べさせてくれる。低温のオーブンで皮ごと焼き上げるそれは、何本も食べれてしまいそうなくらい、柔らかくて、甘い。

実際、友人の5歳の子供が、大人たちの心配をよそに3本をぺろりと平らげた。親もびっくりしていた。

コロナ自粛で、人が集まることがなくなった。

おじさんたちは、元気をなくしていた。

そこに、花火の話が来た。

そりゃ、やるでしょ。

村内の企業を直接訪問して、協賛金を募り、消防団を巻き込み、村の催し物の際にチラシを配り、お金を集めた。

道具も、持っている人がそれぞれ持ち寄って、なんとかした。

そう、なんとかした。

花火大会なんて、開催したことない、素人たちが。

司会役の消防団員と東屋で直前に打ち合わせをする。父の書いた難解な字を解読しながら、大急ぎでアナウンスの練習をする。

いよいよ、開始前の空砲を打つ時間。無線役が指示を出す

「空砲、お願いします」

無線の先の父が答える

「はいよー。あれ?チャッカマンが#%^*>+」

「チャッカマン!?!?大丈夫!?!?!」

よく聞こえなかったけど、チャッカマンに不備があったらしい。司会役とずっこけそうになりながら、空砲を待つ。

空砲がちゃんと上がってからは、スムーズだった。

感染予防のため大声の歓声はないが、場が熱く盛り上がっていくのを感じる。小規模だけれど、かなり近くで見れるので大迫力だ。そして、無風だったため池に映り込む花火が美しかった。

私の役割は、メッセージ付き花火の、メッセージを読み上げること。アナウンスを読み上げると、無線役の人が連絡してくれて、タイミングよく花火が上がる。

すごく、気持ちよかった。程よい緊張感。静寂のちの爆音。上がるハート型の花火たち。感謝メッセージに、気持ちが入る。

最後のプログラムは、ナイアガラ。圧巻だった。

白い火花の筋が上から横並びに降りてくる。

その光の筋は池の水面に映って、更に下にも伸びていく。

周りには白樺群生の白い幹。

空を見上げれば満天の星。

無風ゆえに、広がっていく厚い雲のような煙が上下に広がる。

美川憲一も、小林幸子もびっくりの演出。

直前の打ち合わせ中に、花火師のおじさんは言った。

「ナイアガラのときの曲はアレがいいな。スウェーデンのさ、ソロで歌ってるアレ」

「???」

その場にいたみんなでキョトン。

しばらくの沈黙の後、司会役が言った

「エンヤですね!」

「そうそれ!」

天才か。“スウェーデンのアレ”はエンヤだったのか。

その、アレの曲が幻想的なナイアガラにぴったりだった。

花火終了後、色んな人が声をかけてくれて、感動や感謝を伝えてくれた。ありがたい。

私は、最後の最後でアナウンスという、美味しいところをちょっと、かじっただけだ。

準備、計画、実行に至るのは本当に大変だったと思う。携わった全ての人の、実行力、行動力に、賞賛の拍手を送りたい。

片付けが終わり、父とすれ違い際にグータッチをした。ちょっと、照れ臭い。

家には、とうもろこしおじさんが軽トラで送ってくれた。運転しながら、おじさんはぼやいていた。

「もう少し、準備の時間があればもっと色々できたにな」

おじさんの、志はどこまでも高い。来年が楽しみだ。

また、この、お祭り男たちが活躍できる世の中になりますように。願いながら、今日は寝ようと思う。

ヤツレンhttps://www.yatsuren.jp/

八ヶ岳ふれあい公園
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信州野辺山高原の森の入り口

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